キャバリアに多い心臓病|僧帽弁閉鎖不全症について獣医師が解説

キャバリアに多い心臓病|僧帽弁閉鎖不全症について獣医師が解説

キャバリアを飼っている飼い主様は、キャバリアに心臓病が多いということを一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
実際にキャバリアは、全犬種の中でも僧帽弁閉鎖不全症の発症率が特に高い犬種として知られています。
それくらいキャバリアに心臓病は多いです。

本記事ではキャバリアに多い心臓病である僧帽弁閉鎖不全症について解説します。
キャバリアを飼われている飼い主様はぜひ最後までお読みいただき、キャバリアに多い心臓病について詳しくなっていただけると幸いです。

目次

キャバリアはどういう犬種?

キャバリアとは正式名称がキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルで、体重5〜8kgほどの小型犬です。
17世紀のイギリス王室で愛されていたスパニエルが起源とされ、その名の通りチャールズ国王にちなんで名付けられました。
かつては鼻の短い犬種と交配が進みましたが、20世紀に入り元々の姿を取り戻すよう改良され、今の姿になったと言われています。
キャバリアには

  • 白地に栗色のブレンハイム
  • 白黒茶色のトライカラー
  • 黒地に茶色のまろ眉のブラック&タン
  • 栗色単色のルビー

の4種類の毛色が存在していて、日本ではブレンハイムが特に人気です。
キャバいらは穏やかで人懐っこく、子供や他の犬とも仲良くできる犬種として古くから多くの飼い主様に愛されています。

キャバリアに多い心臓病である僧帽弁閉鎖不全症とは

キャバリアの心臓病というと、真っ先に名前が挙がるのが僧帽弁閉鎖不全症です。
心臓の中で血液の逆流を防いでいる「弁」のひとつである僧帽弁が、うまく閉じきらなくなってしまう病気です。
心臓は

  • 右心房
  • 右心室
  • 左心房
  • 左心室

という4つの部屋からできています。
血液は右心房→右心室→肺→左心房→左心室→全身という決まった向きにだけ流れる仕組みになっています。
この一方通行を支えているのが各部屋の間にある弁で、左心房と左心室の境目に位置するのが僧帽弁です。
僧帽弁閉鎖不全症になると僧帽弁の合わせ目にすき間ができ流ため、心臓が収縮するたびに血液の一部が左心房へと逆流するようになります。
この逆流をきっかけに

  • 疲れやすさ
  • 肺水腫

といった変化が体に現れてきます。
キャバリアはこの病気の好発犬種の中でも特に発症時期が早いことで知られており、まだ若い年齢のうちから心雑音が見つかるケースも珍しくありません。
海外の調査では、6〜7歳で約50%、11歳前後になるとほぼ100%のキャバリアがこの病気を発症するというデータも報告されています。

僧帽弁閉鎖不全症では咳が出る

僧帽弁閉鎖不全症の症状として比較的早い段階から現れやすいのが咳です。
僧帽弁から血液が逆流すると、本来左心室へ流れ込むはずだった血液が左心房に溜まっていきます。
血液量が増えた左心房は次第に膨らみ、その真上を通る気管を押し上げるようになります。
この気管への圧迫や刺激が僧帽弁閉鎖不全症で咳を引き起こす原因のひとつです。

僧帽弁閉鎖不全症では疲れやすくなる

逆流によって全身に送られる血液の量そのものが減ってしまうのも僧帽弁閉鎖不全症の特徴です。
血液が運ぶ酸素の量が不足するため、ちょっとした運動でもすぐに息が上がったり、疲れてしまったりするようになります。
キャバリアは活発でよく動く犬種です。
「最近散歩の途中で座り込むことが増えた」「以前より遊びに誘っても乗ってこない」といった変化に気づいたら年齢のせいと決めつけず、心臓病のサインである可能性も考えてみてください。

最終的には肺に水が溜まる

僧帽弁閉鎖不全症がさらに進行すると肺水腫と呼ばれる状態に至ります。
左心房に血液が溜まり続けると、やがて左心房だけでは血液を受け止めきれなくなり、その手前にある肺の血管にまで血液が渋滞するようになります。
血管内の圧力が高まった結果、血液中の水分が血管の外へとにじみ出し、肺の中に水が溜まってしまうのです。
肺水腫の状態になると酸素をうまく取り込めなくなり呼吸が苦しくなります。
原っぱの中にいるキャバリア

僧帽弁閉鎖不全症のステージ

僧帽弁閉鎖不全症は、症状の重さに応じてA〜Dの段階に分けて管理されます。
ステージごとの目安は以下の通りです。

ステージ定義と治療
A発症リスクが高い犬種(チワワ、キャバリアなど)で心臓に異常がない状態。
治療は不要。
B1僧帽弁の逆流はあるものの、心臓の拡大はない状態。
基本的に治療は不要。
B2僧帽弁の逆流があり、心臓の拡大が見られる状態。
このステージから治療が必要。
C肺水腫を発症した状態。
強心剤や利尿剤など複数の投薬が必要。
D標準的な治療を行っても症状が抑えられない肺水腫を発症した状態。

キャバリアの飼い主様にできること

僧帽弁閉鎖不全症についてひと通り解説してきましたが、実際に飼い主様ができる対策にはどんなものがあるのでしょうか。
ここでは心臓病になる前と後、それぞれの段階でできることを整理してご紹介します。

まだ心臓病になっていないキャバリアを飼っている場合

キャバリアは生まれつき僧帽弁閉鎖不全症のステージAに位置づけられているように、この病気に対する遺伝的なリスクがとくに高い犬種です。
僧帽弁閉鎖不全症は発症すると自然に治ることはなく、時間とともに進行していく病気であるため、発症前からの備えが重要になります。
これまで健康診断で心臓を指摘されたことがない子でも、早期発見のために定期的なチェックを習慣にしましょう。
目安として7歳未満であれば年1回、7歳を超えるシニア期に入ったら年2回の受診がおすすめです。
もし健康診断で「心臓に雑音がある」と言われた場合、それはすでに僧帽弁閉鎖不全症のステージB1以上に進んでいるサインかもしれません。
早めに動物病院で詳しい心臓検査を受けるようにしましょう。

心臓病になってしまったキャバリアを飼っている場合

僧帽弁閉鎖不全症は一度発症すると完治させることはできない病気です。
ただし、治療によって進行のスピードを抑えたり、症状を和らげたりすることは十分可能です。
その代表例がEPIC studyと呼ばれる大規模な臨床データです。
ステージB2の段階から投薬治療を開始することで、より重いステージCへ移行するまでの期間を平均で15か月延ばせることが報告されています。
ステージCに進んでからも、適切な治療によって症状をコントロールできるケースは多くあります。
「もう治らないから」と諦めてしまうのではなく、動物病院とよく相談しながら治療を続けていくことが大切です。
また、キャバリアは人懐っこく感情表現が豊かな分、興奮しやすい一面も持ち合わせています。
興奮は血圧の上昇を招き、心臓への負担を増やす原因になるため、日常生活の中で愛犬が過度に興奮する場面があればできるだけ避けるよう工夫してみてください。

まとめ

キャバリアは心臓病が非常に多い犬種です。
そして心臓病になると基本的に完治することはなく徐々に悪化していきます。
だからこそ飼い主様が知識をつけて、定期的に動物病院に通い、早期発見、早期治療をすることが重要です。
普段動物病院に行かないキャバリアの飼い主様は、一度は動物病院で健康診断を受けていただけると幸いです。

当院ではキャバリアの心臓病を含む心臓病の治療に力を入れています。
キャバリアを飼っている方で心臓病についてお悩みの方はいつでもご相談ください。

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